書評

星の子(今村夏子 著)の感想レビュー・書評

数ヵ月前に王様のブランチで紹介されていてからずっと気になっていた「星の子」を読みました!

いつか読もうと思ってた小説や、そのうち見ようと思ってた映画を次々と楽しめているので自宅待機も悪くない☺️

星の子は今年2020年夏に芦田愛菜ちゃん主演で映画化予定なので楽しみです。

以下ネタバレも含まれるので、これから読もうとされてる方は見ないようお願いしますm(__)m

星の子のあらすじ

林ちひろは中学3年生。病弱だった娘を救いたい一心で、両親は「あやしい宗教」にのめり込み、その信仰が家族の形をゆがめていく。野間文芸新人賞を受賞し本屋大賞にもノミネートされた、芥川賞作家のもうひとつの代表作。《巻末対談・小川洋子》

(引用元:amazon)

感想・書評

あらすじを読んだとき、あぁきっと「家族の崩壊」とか「家族愛による救出」みたいなテーマなんだろうな と思いました。

でも、全然違いました。
その要素もあるんですが、結果的に、「この家族は壊れてなんてない」し、ただのよくある悲劇的な話ではないんです。

私は以下2つが、星の子のテーマだと感じました。

テーマ①信じる/信じない

この小説の最大のテーマは「信じる/信じない」ということだと思います。

日本ではどうしても宗教というと怪しいイメージが付きまといます。
オウム真理教が引き起こした事件などがその要因でしょう。

わたしは無宗教ですが、キリスト教や仏教を多くの人が信仰していてそういった大半の宗教が他人に危害を与えたり、怪しいものではないんだということも理解しています。

理解はしているんです。
でもキリスト教や仏教における神様のようなものの有無を信じているか と聞かれたら、正直分からないです。

この小説の主人公の難しいところは、その信じられるかよく分からない宗教 というものを自分の一番身近で、一番大切で、一番感謝してる両親が信仰している ということです。

主人公は姉との2人姉妹で、両親に対して非常に対照的な行動を取ります。

姉は両親に反抗して若くして家を出てしまいますが、主人公は両親と仲が良く、宗教団体のイベントにも毎年参加しています。

姉はその宗教を全く信じていないのでしょう。
ただ、主人公も、決して信じているわけではありません。

主人公の台詞でとても印象に残ったものがあります。

「あんたも?」となべちゃんにきかれた。
「信じてるの?」
「わからない」とわたしはこたえた。

「わからないけど、お父さんもお母さんも全然風邪ひかないの。わたしもたまにやってみるんだけど、まだわからないんだ」
「ほんとだったらすごいと思うけど」と、なべちゃんは言った。
わたしはうなずいた。
「そうだね。ほんとだったらほんとにすごいんだけど」

宗教で万能の水として信じられている「金星のめぐみ」を、タオルにかけて頭にのせることで健康になり病気も治る と信じている両親。

ある日公園で両親がいうものように頭にタオルをのせているところを友達や憧れの教師に見られてしまった主人公。

それが両親だと知らずに「頭のおかしい不審者だから気を付けろ」と心配する憧れの教師。


主人公は体の震えが止まらなくなるほどショックを受け、逃げるように走り去るのですが、家に帰ったあと両親に話しかけられても、決して両親に強くは当たらないんです。
そのシーンを読んでるときは、両親の謎な行動のせいで恥をかいたのに怒らない主人公が不思議だったんですが、上記の文章を読んで納得しました。

そう、その宗教が正しいのか、嘘なのか主人公自身も「わからない」からです。

信じる人も信じない人もいる。
でも、「わからない」という人が一番多いんじゃないでしょうか?

後半では宗教団体に属する主人公の友達の彼氏が、「ぼくは、ぼくの好きな人が信じるものを、一緒に信じたいです。」と演説するシーンもあります。

信じるって難しいし、信じないと断言することも難しい。 
そして、愛してる人が信じてることはできれば信じたい。 

でも世間一般的に見たら、怪しげな宗教なんです。
中学生の主人公からしたら学校での見られ方や他の大人の意見はとても影響力があります。

愛する両親の信仰と世間の意見の狭間で揺れる主人公の気持ちが、切なくて。

星の子のストーリーは決して劇的な展開があるわけじゃないのですが、胸いっぱいになって泣いてしまう作品」だと思います。

テーマそれでも両親

もうひとつ、印象に残ったシーンがあります。

主人公の叔父(お母さんの弟)が、両親に宗教団体を辞めてほしいがために、両親が飲んでいる「金星のめぐみ」を公園の水道水と入れ替える というシーンです。
「ほら、ただの水じゃないか、目を覚ませ!」と叔父に言われた両親は驚き、怒り狂います。

実は、水を入れ替えていたのは姉の協力で叔父がやっていたことでした。

姉の協力なんだから、このシーンでは姉も一緒に「こんな宗教団体もう辞めてよ」と両親に訴えるはずです。

でも、怒り狂って取り乱す両親を前に、姉は叔父に向かって震えながら、泣きながら「出てってよ!」と包丁をつきつけます。

これが、、、この矛盾がめちゃくちゃ心に刺さるんです。

姉は宗教を信じてないし、毛嫌いしてるし、辞めてほしいはずなんです。
でも、ショックを受けて取り乱す両親を目の前に、両親を傷つけた叔父を追い出そうとします。

ここに、「親と子供の関係」というのが凝縮されている気がしました。

例えば虐待を受けてもなお両親を愛する子供がいると聞きます。

わたしの両親は愛情深かったですが、捻れてる部分があって若い頃はよく反抗したし、父親とは一切話さない期間もありました。

でも、一番仲悪い時期でも、両親がいなくなったらどうしよう という気持ちは常にありました。

この小説の両親は決して悪い親ではないんですが、
姉からしたら家を出る決意をするほど、宗教にのめり込む両親が嫌だったはずです。

それでも、両親を傷つける人に対して幼い手で包丁を向けるような気持ち。
「それでも両親だ」という気持ち。

すごく共感するし刺さりました。

結末

この小説の結末は、描かれていません。
主人公が両親と寄り添って星を見て終わります。

正直読み終わったあと、えっ!と思いました。

答えを描いてほしかった。。。
読者に未来を委ねる形のラストです。

ただ、、、あとがきの対談で今村夏子さんが語られてる「最初予定していたラスト」を読むとぞっとします。笑

ぜひ対談も読んでみてください(^^)

最後に

読み終わったあと、しばらく考え込んでしまうような作品でした。
映画も気になります。

読もうか迷っていた方、ぜひ読んでみてください(*^-^*)

外出できないこんな時期だからこそ、いつもできないことをたくさん楽しみましょう!


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